1. 電力会社って選べるの?そもそも「新電力」って何?
「電力会社って、自分で選べる時代なんです」——そんな話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。しかし、具体的にどんな選択肢があるのか、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。
この「選べるようになった電力会社」というのが、いわゆる「新電力」と呼ばれる存在です。新電力とは、電力自由化にともなって登場した、民間の電力小売事業者のことを指します。たとえば東京電力や関西電力など、これまで地域ごとに決まっていた大手の電力会社とは別に、さまざまな企業が電気を販売できるようになったのです。
電力の自由化は段階的に進められ、2016年には一般家庭向けにも完全に自由化されました。これにより、消費者は契約する電力会社を自分で選べるようになり、電気料金のプランやサービス内容も大きく広がってきています。
たとえば、「使えば使うほどポイントが貯まる」「環境に配慮した再生可能エネルギーを使っている」「ガスやインターネットとまとめて契約できる」といった、新電力ならではの独自サービスを打ち出す企業も増えており、電気の選び方にも個性やこだわりが反映されるようになってきました。
とはいえ、「電力会社を選ぶ」と言われても、なかなかピンとこないというのが正直なところかもしれません。ここからは、そんな新電力の仕組みやメリット・デメリットについて、できるだけわかりやすくご紹介していきます。
2. 新電力ってどういう仕組みで成り立ってるの?
新電力を語るうえで欠かせないのが、「電気は誰がどうやって届けているのか?」という仕組みの話です。
もともと、日本の電力供給は、大手の電力会社が発電から送電、配電、そして販売までを一手に担う体制で運営されてきました。これは「地域独占」と呼ばれる形で、住んでいる場所によって契約できる電力会社が決まっていたというわけです。
しかし電力自由化の流れを受けて、この一体型の体制は見直され、発電や小売などの分野が切り分けられるようになりました。これにより、たとえば発電所を持たない企業でも、電気を仕入れて販売する「小売電気事業者」として市場に参入できるようになったのです。これが「新電力」と呼ばれる企業たちです。
新電力会社の中には、自前で発電設備を持っているところもありますが、多くは他の発電事業者や電力卸市場などから電気を調達して、それを一般家庭や企業に販売しています。
では、送電や配電はどうなるのかというと、ここはこれまでどおり大手の電力会社が担っています。つまり、実際に電気が送られるための「電線インフラ」は変わらず使用されているということ。これにより、新電力に切り替えても、電気の質が変わったり停電が増えたりする心配は基本的にありません。
新電力の仕組みを一言でまとめると、「発電と販売を分けて、より多くの事業者が関われるようになった」状態です。このことで、競争が生まれ、より消費者のニーズに合ったサービスが生まれてきたという背景があります。
3. 新電力に変えると、どんなメリットがあるの?
新電力に関心を持ったとき、やはり気になるのは「変えてみると、どんな良いことがあるのか?」という点ではないでしょうか。ここでは、実際に新電力を選ぶことで期待できるメリットをいくつかご紹介します。
まず一番のポイントは、電気料金が安くなる可能性があるという点です。自由化によって多くの企業が参入したことで価格競争が進み、各社が独自の料金プランを打ち出すようになりました。なかには、時間帯や季節ごとに料金が変動するタイプや、使った分に応じてお得になる仕組みを採用しているところもあります。特に夜間に電気をよく使う家庭や、昼間に電力使用量が多い事業者にとっては、現状よりも大幅な節約につながるケースもあるでしょう。
次に、プランやサービスの多様性も魅力です。たとえば、再生可能エネルギーを100%使用したプランや、ガスやネットとセット契約にすることで割引が受けられるプランなど、ライフスタイルに合わせた選び方ができます。「毎月ポイントが貯まる」「一定額以上の利用でギフト券がもらえる」といったユニークな特典を用意している会社もあります。
さらに、環境への配慮ができるというのも見逃せません。近年では地球温暖化への意識が高まる中、太陽光や風力など、再生可能エネルギーを積極的に取り入れている新電力会社も増えています。そうした企業を選ぶことで、日々の生活の中で自然とエコな行動ができるという点に共感する方も多くなっています。
このように、新電力には「安くなる」「選べる」「環境にもやさしい」といった、消費者にとってうれしいメリットが詰まっています。ただし、良い面ばかりではなく、注意しておきたい点もありますので、次のセクションでデメリットについてもしっかり見ていきましょう。
4. 新電力の注意点も知っておこう
新電力には多くのメリットがありますが、すべての人にとって必ずしも「良い選択」となるわけではありません。契約前には、いくつかの注意点もしっかり把握しておくことが大切です。
まず最初に挙げられるのが、電気料金が思ったより安くならないケースがあるという点です。たとえば、燃料費の高騰や卸電力市場の価格が不安定になったときには、逆に料金が上がってしまう可能性もあります。また、契約した料金プランが自身の生活スタイルに合っていないと、期待していたようなコスト削減につながらない場合もあるのです。
次に、契約内容の確認不足によるトラブルも起こりがちです。なかには一定期間の契約縛りがあり、途中で解約しようとすると違約金が発生するケースも見られます。引っ越しや生活環境の変化がある方は、特にこの点を事前にチェックしておきたいところです。
そしてもうひとつ注意しておきたいのが、新電力会社の経営リスクです。この数年、急激な価格変動や業界内の競争激化を背景に、事業からの撤退や倒産に追い込まれる新電力会社も出てきました。契約中の電力会社が万一事業を終了してしまっても、突然電気が止まることはありませんが、再び新たな電力会社を探して契約し直す必要があるため、少なからず手間はかかります。
このように、新電力には光と影の両面があるため、契約前には「料金が下がりそうだから」といった理由だけで飛びつかず、しっかりと仕組みや条件を確認することが重要です。

5. 料金プランの種類、どう選ぶ?
新電力を検討するうえで、実は一番悩みやすいのが「料金プランの選び方」です。「電気の使用量が多いと安くなるの?」「夜だけ安いプランってある?」といった疑問を感じた方もいらっしゃるかもしれません。
電力自由化により、各社が独自の料金プランを設けているため、選べる選択肢はかなり広がっています。とはいえ、自分に合ったプランを選ぶには、少しだけポイントを押さえる必要があります。
代表的なプランとしては、以下のようなものが挙げられます。
プラン名 | 特徴 | 向いている人の例 |
従量課金プラン | 使用量が多いほど料金単価が上がる。使用量に応じて段階的に料金が変動。 | 一人暮らしや 電気使用量が少ない家庭 |
定額制プラン | 月額の基本料金が固定されており、一定の使用量までは定額で使える。 | 使用量が安定している 共働き家庭など |
時間帯別料金プラン | 深夜や早朝など特定の時間帯の料金が割安。時間によって単価が異なる。 | 夜間に電気を多く使う家庭、 蓄電池ユーザーなど |
再エネプラン | 再生可能エネルギーを100%または一部使用。環境意識の高いユーザー向け。 | 環境配慮を大切にしたい方 |
セット割プラン | ガス・ネット・スマホなどとまとめて契約することで割引が受けられる。 | 複数の契約を一括で管理したい家庭 |
選び方のコツとしては、まずご自身の「電気の使い方」をざっくりでもイメージすることが大切です。たとえば、昼間は家に誰もいないけれど、夜はエアコンや家電を多く使うという場合には、「夜間割引」タイプのプランが向いているかもしれません。また、小さなお子さんがいて一日中在宅という家庭では、定額タイプやセット割の方が安定してお得になる可能性もあります。
気になるプランがあれば、各社の公式サイトや比較サイトなどで「どのくらいの電気使用量ならどのくらい安くなるのか」をシミュレーションできることが多いので、ぜひ活用してみてください。

6. 新電力の切り替え、どうやってやるの?
「切り替えって、なんだか手間がかかりそう…」そんな印象を持たれる方も多いのですが、実は新電力への切り替え手続きはとてもシンプルです。難しい書類を準備したり、電気工事をしたりする必要もほとんどありません。
まず必要なのは、「現在の電気の契約情報」です。これは電力会社から送られてくる「検針票(明細書)」や「Web明細」に記載されています。そこには、契約中の電力会社名・使用量・お客様番号などが載っているので、新たに契約をする際の情報入力に使います。
あとは、切り替え先の電力会社を選んで、Webフォームや電話で申し込むだけ。特に人気のある新電力会社のほとんどは、インターネットからの申し込みに対応しており、数分で完了するものも珍しくありません。
切り替えにあたって、現在契約中の電力会社への「解約手続き」は基本的に不要です。新たに契約した電力会社が、切り替え作業を代行してくれるため、ユーザー側で行うことはほとんどありません。
また、電力メーターが「スマートメーター」に対応していない場合は、無料で取り替え工事が行われることがあります。といっても、立ち会い不要・費用負担なしで済むことが多いため、心配する必要はほとんどないでしょう。
「切り替えたあとに電気が止まったりしないの?」と不安に思うかもしれませんが、電気の供給元である送配電網はこれまでと同じなので、電気の質や安全性が損なわれることはありません。つまり、ユーザーとしては“何も変わらずに、いつの間にか切り替わっていた”という感覚になることもあるほど、スムーズに進みます。
7. 自分に合った新電力を見つけよう!
新電力の世界は想像以上に多様で、それぞれの家庭のライフスタイルに合わせた選び方ができるのが大きな魅力です。しかし、選択肢が多すぎて、どれを選べばいいのか迷ってしまうこともあるかもしれません。
そんなときに大切なのは、「何を優先したいか」を明確にすることです。たとえば「毎月の電気代をできるだけ抑えたい」という方なら、まずは従量課金や定額制のプランを比べてみるのが良いでしょう。一方、「環境のためにできることを始めたい」という方であれば、再エネ由来の電気を扱う企業に注目してみると、気持ちの面でも納得感を持って契約できます。
さらに最近では、電気の使用量をアプリで可視化してくれるサービスや、ポイント連携、家計簿アプリとの連携など、ちょっとした付加価値を感じられる新電力会社も増えています。料金面だけでなく、こうした“使い勝手”の部分にも注目してみると、自分に合った電力会社がより見つけやすくなるかもしれません。
まずは、ご家庭の電気使用量や生活スタイルをざっくり確認しつつ、いくつかの新電力会社のプランを見比べてみることから始めてみましょう。じっくり見てみると、「これ、うちにぴったりかも」と思えるような選択肢が見つかるかもしれません。
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