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インテルが「18A」世代のSRAM披露、TSMCの2nmと集積度互角―次世代半導体開発競争の最前線

はじめに:なぜSRAMの技術進化が重要なのか?

現代のプロセッサにおいて、SRAM(Static Random Access Memory)は欠かせない存在です。SRAMは、CPUやGPU内部のキャッシュとして用いられ、処理速度の向上に直結する超高速なメモリです。このため、SRAMの集積度(密度)が高まることは、より多くのキャッシュを搭載できるようになり、処理性能を高める大きな要因になります。

2025年に入り、半導体業界の2大巨頭、**インテル(Intel)TSMC(台湾積体電路製造)**が、次世代プロセスノードにおけるSRAM技術を発表しました。インテルは「18Aプロセス」、TSMCは「2nm(N2)プロセス」で、それぞれ従来より大幅に小型化されたSRAMセルを披露。両者のSRAM密度は、ついに“互角”と呼べる領域に達し、業界を驚かせました。


第1章:インテルの「18Aプロセス」って何?

1.1 「18A」はいつ登場する技術?

インテルの「18A」は、2024〜2025年の製品投入を想定した最先端プロセスノードで、名称の“18”はおおよそ「1.8nm世代」であることを示しています(実際のゲートピッチは異なる)。このプロセスでは、同社の革新的な2つの新技術がフル活用されています:

  • RibbonFET:インテル独自のGAA(Gate-All-Around)トランジスタ構造。これにより、電力効率と性能の両立が可能に。
  • PowerVia:業界初のバックサイド給電技術。電力線をチップの裏面に配置することで、前面の回路設計の自由度が高まり、性能と密度の最適化が可能。

これらの導入により、「18Aプロセス」はこれまで以上に高密度・高性能な回路構成を実現しています。


第2章:18Aプロセスで作られたSRAMは何がすごい?

2.1 SRAMビットセルサイズの縮小

インテルは18A世代で、SRAMビットセルサイズを0.021µm²にまで小型化することに成功しました。これは前世代「Intel 4」プロセスの0.024µm²から約13%の縮小にあたり、プロセッサに搭載できるキャッシュ容量の増大を意味します。

TSMCの2nm世代では、ビットセルが0.0175µm²とさらに小さい数字を出していますが、インテルはその分、回路構造の最適化によってトータル性能で互角の水準を実現したとしています。

2.2 高密度+高性能=理想のSRAM

インテルによると、18Aで製造されたSRAMは、最大38.1Mbit/mm²という密度を達成。これはTSMCの「N2」とほぼ同等であり、長年「TSMC優勢」と言われてきた集積度競争において、インテルが再び肩を並べた形です。

さらに注目すべきは性能面です。インテルの発表によれば、このSRAMは1.05Vで5.6GHz動作を実現しており、TSMCのN2によるSRAMの動作周波数(概ね4.2GHz前後)を上回っています。


第3章:TSMCの2nmプロセス(N2)の特徴

TSMCは、FinFETからGAA(ナノシート)トランジスタに移行した2nmプロセスを用い、チップ密度やエネルギー効率を劇的に改善。主な特徴は以下の通りです:

  • ビットセルサイズ:0.0175µm²
  • SRAM密度:38Mbit/mm²
  • 性能・効率の向上:最大15%電力効率改善、または30%性能向上(N3比)

つまりTSMCは、「とにかく小さく、多く詰め込む」ことに長けているのが大きな特徴です。


第4章:なぜインテルは“互角”になれたのか?

インテルは、単純なビットセルサイズでTSMCに負けていても、「PowerVia」と「RibbonFET」の導入によって、回路構造の効率性と高い動作周波数を確保。これにより、実効性能=実アプリケーションでの使いやすさにおいてTSMCと“互角”の勝負ができるようになったのです。

【技術的ポイント】

  • PowerVia(バックサイド給電):電源ラインを裏側に逃がすことで、表面の回路密度が増し、干渉も少なくなる。
  • RibbonFET(ナノリボン型GAA):トランジスタのスイッチング速度が速くなり、消費電力も低減。

これらは単なる微細化を超えた“構造改革”といえ、インテルが数年間遅れていた製造技術の面でようやく巻き返しを果たしつつあることを示しています。


第5章:今後の半導体市場への影響

このSRAM集積度競争の激化は、以下の分野に直接的な影響を及ぼします:

◎ ① ハイエンドCPU/GPUの性能強化

より大容量のL2/L3キャッシュが同じダイサイズに搭載可能になり、ゲームやAI演算の性能がさらに高まる。

◎ ② AI・HPC(高性能計算)用途での電力効率向上

SRAMが多いほど、メモリアクセスのボトルネックが減少し、電力効率の良い計算が可能になる。

◎ ③ モバイルSoCの省スペース化

限られた面積で最大限の性能を発揮するため、SRAM密度の高さはスマートフォン設計にも寄与する。


結論:インテルは再びTSMCと肩を並べた

インテルの「18A」プロセスにより、SRAM密度と性能はTSMCの2nmプロセスと事実上“互角”にまで進化しました。長らくファウンドリ市場で後れを取っていたインテルですが、構造的な革新(PowerVia、RibbonFET)により、ようやく真っ向勝負ができるレベルに達しています。

2025年後半以降、この18Aプロセスを採用した製品(Meteor Lake後継やAIアクセラレータ)が市場に登場することで、実際の応用分野でもその成果が見えてくるでしょう。

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